法人化するにあたって組織づくりは「カネ・モノ・ヒト・情報」の4大リソース(経営資源)を生成するにあたって非常に重要な土台となる部分です。
会社を立ち上げで組織体制を整えることにつまずいてしまう人も少なくないでしょう。会社の方針や変革、目標などから適した形態を築き上げることで安定した組織を形成することが大切になります。
今回は、それぞれの企業にあった5つの組織形態について詳しくご紹介します。
組織形態とは
経営組織の形態を組織形態と呼び、企業の大きさや業種などで異なる形態の経営組織が存在します。
企業それぞれが掲げている目標や達成するための事業戦略などから適した組織形態をとることが求められます。
その中で主な5つの組織形態をご紹介します。
- 職能別組織
- 事業部制組織
- マトリックス組織
- プロジェクト組織
- 持株会社
5つの組織形態の仕組みと特徴
職能別組織
職能別組織とは、業務を専門機能に分けられた組織形態で、別名「機能別組織」とも言います。
一つの会社とはいえど、製造や販売、売上計上などの業務を一人一人が行うと非常に効率が悪いため、各業務の役割ごとに部門(部署)を編成することで、求められている専門的機能(業務)だけを行います。
上記の図のように、経営層を上位に置き、経理、開発、営業、人事、総務など異なる業務内容を別枠と捉えて職能別に専門的業務を行うのが特徴です。
職能別組織は、トップおく最もスタンダードな組織形態になります。専門性に特化させることで、業務を分業し生産性の向上を図ります。
事業部制組織
職能別組織とは違って、行う事業を単位として構成し、その単位を軸に組織を構成するのが特徴です。
事業を一つしか持っていない中小企業も多いのですが、大企業になると複数の事業を持つことがあります。職能別組織では事業を一つしか持たない企業が持つ形態ですが、この場合はトップである経営陣に意思決定権があります。
これに対し事業部制組織は、複数の事業を経営者が行うのには無理があるために、意思決定権を事業部に持たせます。
意思決定権と同時に、赤字ばかりにならないよう、事業部に利益責任を負わせるのもこの事業部制組織の特徴の一つです。また、事業部は基本的に「地域」「顧客」「製品」別で分けられます。
マトリックス組織
マトリックス組織は、上記で説明した職能別組織と事業部制組織を掛け合わせたような組織形態。一社員が事業、職能、地域等の単位で仕事を行います。
1人の社員が複数の部門に所属し、複数の目的(事業・地域・製品など)を追求することで部署の間の壁、いわゆる情報共有が拡散されやすく、業務の効率化へと発展していきます。
事業部制組織では、構成図にもあるようにあくまで一社員は「国内事業の〇〇部」「海外事業の〇〇部」という位置付け。
これに対し、マトリックス組織では社員が「国内事業部」と「〇〇部」、「海外事業部と〇〇部」の2つの部署に所属することになります。
カンパニー制組織
カンパニー制組織とは、名前の通り事業部内にある営業、人事、経営などの部門を一つの会社として扱うことで、権限を委譲し効率性を図る社内分社制の一種です。
組織構成としては事業部制組織と似ていますが、事業部を法人のように扱うことでその一社の意思決定権が事業部制組織よりのも大きいことが特徴です。
上層部への確認がなくとも一つの会社で意思決定を行うことができます。
小さな一社として組織を構成することで、柔軟な業務の遂行や社員一人一人のスキルアップに務めることができるため、将来的な経営力を蓄えることも可能です。
チーム制組織
チーム制組織とは、ある問題解決をするために各専門部署から集めて結成される一時的な組織のことです。プロジェクトをする際によく使用されることがあることからプロジェクト組織とも言われています。
そのため、各部署からの専門知識とノウハウからスピーディーでクオリティーの高い業務を行うことができます。
5つの会社組織形態のメリットとデメリット
上記では、5つの組織形態について述べてきました。ここでは、さらに各組織形態のメリット・デメリットをご紹介してきます。
職能別組織
メリット
- 専門的スキルが鍛えられる
- 企業の目標や方針のズレが発生しにくくなる
- トップの意思が伝わりやすく、管理しやすい
- 業務をこなすことで、ノウハウや知識を積み重ねることができる
業務を専門的な単位に分けられることが特徴の職能別組織にとって、社員の専門性を活かせられ、さらにそのスキルを高め続けられることは最大のメリットとなるでしょう。
さらには、トップに決定権があるために組織全体の方針や意思決定が統一されやすいため、しっかりと軸がある経営が可能になります。
デメリット
- 上層部に所属するゼネラルマネージャーの育成
- 責任が明確でなく、部門間でトラブルに発展しやすい
- トップマネジメントの負担がかかる
企業全体を一元管理するゼネラルマネージャーにとって、部署全体を把握することが基本であり、専門的な業務をしている社員をこのような広い視点を持ったゼネラルマネージャーへと育成することが非常に難しい部分にあります。
さらには、各部署があったとしても何かしらのトラブルが起こった場合に責任が果たしてどの部署に当たるのか不明確になる可能性もあります。
また、各部署を配置したこの組織形態の上には事業部が存在しないため、全ての負担をトップが抱え込まないといけないために、大きな負荷がかかってしまうのが職能別組織のデメリットです。
事業部制組織
メリット
- 迅速な意思決定が可能
- 問題が発生した際の責任所在が明確
- 部門に特化されないために総合的な人材育成ができる
- 事業ごとで経営判断の明確化
事業部制組織は、職能別組織の形態であるトップと部署の間に事業部を入れたもの。そのため、意思決定権とともに利益責任をトップではなく各事業部に委ねる形になります。
そのため、問題が発生した場合に事業部の責任とすることで明確化できるほか、事業ごとの意思決定権により、経営判断を管理することができます。
デメリット
- 事業における機能の重複とコスト負担
- 事業間の交流減少
職能別組織と違い、部署ごとではなく主に事業部ごとの業務となるだけに、部門(人事・経理・営業など)の重複が起こってしまい、各事業でコストを消費してしまうとめ、結果コストの増大になってしまう可能性があります。
さらには、各事業間での業務となるために他事業部とのコミュニケーションが少なくなってしまうため、会社全体の情報共有がしにくい点もデメリットの一つです。
マトリックス組織
メリット
- 業務の効率化
- 部門間の壁が薄くなる
- トップマネジメントの負担が減少
- クオリティの上昇
事業部制組織とは違い、部門間の障壁や統一性が解消されるのがマトリクス組織のメリットです。
1人の社員が複数の事業に所属することになりますので、各部署とのコミュニケーションが取りやすく、業務効率化がアップします。
さらには事業部制組織同様にトップによる意思決定権が不要になるために、トップマネジメントの負担軽減にもなります。
デメリット
- 責任所在が不明確の場合がある
- 系統が複雑化し、混乱を招く恐れがある
マトリックス組織の一番のデメリットは系統の複雑化。指揮を取る責任者が複数であるために意思疎通が取れなくなり、混乱を招く恐れがあります。
そのため、責任の所在も怪しくなり、指揮官同士での対立を生む可能性も。
チーム制組織
メリット
- 短期集中で業務効率がアップ
- 専門性に特化したスキルの高い人材の集まり
- 組織からの新たな戦略の発掘
各部署の高い能力を持った専門社員が集結することで、短期集中でクオリティの高いプロジェクトを行うことが可能です。
さらには、そのプロジェクトから新たな戦略や事業を発掘する可能性も秘めていますので、重要なプロジェクトに組織を形成するのも一つの手でしょう。
デメリット
- 所属先部署の業務進行の調整が必要
- 価値観の違いから意見がまとまらない可能性も
デメリットとして各部署の業務調整が必要になります。1人の社員がプロジェクトを進行している中、部署での業務に集中でないため、業務の振り分けが必要です。
また、プロジェクトを組んだとしても各部署の価値観が合わないことが考えられるため意思疎通に費やす時間を短縮させるためにも工夫が必要です。
カンパニー制組織
メリット
- 責任の所在が明確
- 迅速な事業運営が可能 競争力の強化で組織全体が向上
- 算出した利益を把握できる
カンパニー制組織は組織構成がシンプルであり、一つのカンパニー(企業)として区切られるために責任の所在が明確化できます。
さらには、カンパニーごとに事業運営を行うことができるため、事業展開のスピードにも特化しています。また、カンパニーでの競争力がアップしますので、組織全体の向上にも繋がる点も、カンパニー制組織のメリットです。
デメリット
- 事業の孤立化でコミュニケーションが減少しやすい
- 部門の重複化でコストの増大
- 目標や意思が不統一になりやすい
カンパニーに区切られた際に、各カンパニーとのコミュニケーションが取りづらく、同じ企業という共通認識が薄れる可能性もあります。
さらに、事業部制組織と同様に各カンパニーで部署を設けることになりますので、部署の重複が起こってしまい、コストの増大になってしまうことも。
デメリットの把握と対策の強化
企業には、分野や方針等で組織形態が違っており、メリットがある分デメリットも存在します。
ただ、これらのデメリットは免れることができないものではなく、ツール等を用いて改善されることもあります。
各組織形態を形成するだけでなく、デメリットを把握することで、しっかりとした統一性かつ軸のある組織形態の形成を行うよう心がけてください。
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