資産除去債務の割引率をわかりやすく解説!割引前将来キャッシュフローの見積りの変更による調整額に適用する割引率とは?【簿記・会計】

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資産除去債務を初めて勉強されている方は、見積り変更のテーマで引っかかっている方、多いのではないでしょうか。筆者もその1人でした。

この記事では、会計を勉強する初心者の方が、資産除去債務の割引率をわかりやすく理解できるようになることを目指して、作成しています。

会計について特段高校、大学と習ってこなかった筆者が、ゼロベースで理解した情報を共有しています。なるべくわかりやすいように、筆者独自の視点により、どう考えているのかを文字に起こしました。

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資産除去債務とは?

資産除去債務とは、有形固定資産を除去する時に発生する負債のことです。

ここで除去とは、例えば売却や廃棄、リサイクルその他の方法による処分などのように、有形固定資産を用役提供から除外することです。除去の対象にならないものとしては遊休資産(稼働を停止しているもの)や、企業の自発的な計画による場合、用途変更や転用などが挙げられます。

ここで、企業会計基準を見ておきましょう。

(1)「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれ に準ずるものをいう。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資 産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資 産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による 特別の方法で除去するという義務も含まれる。

(2) 有形固定資産の「除去」とは、有形固定資産を用役提供から除外することをいう(一 時的に除外する場合を除く。)。除去の具体的な態様としては、売却、廃棄、リサイクル その他の方法による処分等が含まれるが、転用や用途変更は含まれない。また、当該有形固定資産が遊休状態になる場合は除去に該当しない。

出典:企業会計基準第 18 号 資産除去債務に関する会計基準(平成20年3月31日 企業会計基準委員会)

資産除去債務のポイントとしては、有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれ に準ずるものであるということです。

一般の人にもわかりやすい例は、家電リサイクル法です。家電リサイクル法では、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどを捨てる時に、消費者(排出者)が収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことなどを規定しています。つまり、テレビなどを廃棄する際は、法律によりお金を払わなければならないというわけです。資産除去債務とはこんなイメージです。除去するときにかかる支出のことです。

会計上、資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生したときに負債として計上するものになります。まあ、有形固定資産を購入した際に計上すると思ってください。

そして、有形固定資産は、取得時の支出額に、上記の資産除去債務を加えた額で計上します。除去する際にかかる支出を有形固定資産の帳簿価額に乗っけてしまおう!ってわけです。

仕訳では、

(有形固定資産)××× (現金預金)×××

           (資産除去債務)×××

こんな感じになります。

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いくら資産除去債務を計上するの?

資産除去債務の分野においても、割引率が登場します。将来の支出額(除去にかかる将来キャッシュフロー)をそのままの金額で計上するのではなく、将来までの期間分の割引率を考慮するんです。割引後の金額で算定することになります。つまり、結論、割引後の金額で計上します。

少し蛇足になりますが、除去にかかる支出は「費用」の勘定科目のような気がしますよね。しかし、「資産除去債務」は負債の勘定科目であり、企業が支払う法人税等には影響がありません。(費用ではないため、課税所得に影響を及ぼさないからです。)

では、どのようにして費用計上されるのでしょうか。それは、有形固定資産の減価償却費」と「資産除去債務の利息費用」により期間ごとに配分されて計上されています。

除去した際に、一度に費用計上するのではなく、毎期少しずつ費用計上しているというわけです。

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資産除去債務の見積り変更の基本パターン

取得時に見積りした際にはその取得時点の割引率を使用しています。

ところが、常にその額で変動がないかと言えばそうではなく、除去にかかる支出が安くなったり高くなったりしますよね。その際には、見積りの変更が必要です。

その見積もりの変更のときにどの割引率を使うのでしょうか。見積変更には2パターンあります。

見積り変更の基本パターン2つ

基本パターン1 将来キャッシュフローが増加する場合

増加する場合は、新たな負債が発生したと考えます。全く新しい負債を設定するイメージですので、割引率も当然その時の割引率を使用します。

元々あった分は、元々の割引率を適用します。そして、見積変更により新たに発生した増加分のみに、その発生したときの割引率を適用します。

その後は、除去にかかる支出があるまでは、異なる2つの負債を管理していくことになります。利息費用もそれぞれ「既存分」と「増加分」で毎回計上していくことになります。

基本パターン2 将来キャッシュフローが減少する場合

減少する場合は、元々の負債が減少したと考えます。「元々あった」負債の減少なので、割引率は元々の割引率を使用します。新しく設定されているわけではなく、既存のままですよ!ってわけです。

その後は、除去にかかる支出があるまで、「既存分」と「減少分」を合算した負債として捉えていけば良いのです。利息費用もそれぞれ「既存分」と「減少分」で計算するのではなく、資産除去債務を合算して算出した上で、元々の割引率を使用して利息費用を算出し、毎回計上していくことになります。

以上の2パターンが基本になります。

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【応用パターン】将来キャッシュフローが増加したのちに減少した場合

上記の2パターンの応用版があります。それは、将来キャッシュフローが増加したのちに減少した場合です。見積りの変更は1回とは限りません。2回ある場合もありますよね。そんな場合に困ってしまうのが、将来キャッシュフローが増加したのちに減少した場合です。

何が困るかというと、1回目の見積変更において増加したときの処理は、新しい負債として別途資産除去債務を計上すれば良いのですが、2回目の見積変更で減少した際に、どの割引率を適用すれば良いのか困るということです。

基本のパターンでは、将来キャッシュフローが減少する場合は、元々の負債の減少と考えるので、割引率は当初の元々の割引率を適用すれば良いのですが、今回は当初の割引率と1回目の増加分の割引率と2つを考慮しなければなりません。どちらが元々の割引率として適用されるのでしょうか。

結論、減少部分に適用すべき割引率を特定できない時は、加重平均した割引率を適用します。

加重平均した割引率とは、見積1回目変更時の「変更後見積額」、見積変更前の「取得時見積額」、見積1回目変更時の「見積増加額」をもとに算出します。

✔️加重平均した割引率:
当初割引率× 取得時見積額/変更後見積額 + 1回目変更時割引率× 見積増加額/変更後見積額 

で計算します。ここで算出された「加重平均した割引率」を、基本パターン2に当てはめます。つまり、元々の割引率を「加重平均した割引率」として考えて、減少分の資産除去債務を算出します。

次回決算時は、変更1と変更2により増加・減少した資産除去債務を全て合算して、一緒の負債として捉えて、合算額から割引率(加重平均した割引率)を使用して利息費用を算出します。

このように基本パターン2つの考え方を覚え、複雑になった場合は加重平均すれば良い。それ以降は基本パターンに当てはめて考える。と理解しておけばスムーズです。

 

 

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