金銭資産の譲渡(リコース義務・回収サービス業務資産・買戻権)についてわかりやすく解説【簿記・会計】

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会計・簿記において、「金融資産の譲渡」を勉強されている方は、「リコース義務、買戻権、回収サービス業務資産」という言葉が登場してきたことにより理解できず、意味不明だと感じていないでしょうか。

この記事では、小学生でもわかるようなレベルで、初心者向けに金融資産の譲渡リコース義務回収サービス業務資産買戻権について説明していきます。

なお、筆者独自の解釈と考えのもと説明しておりますのでご了承ください。自己責任でお願いします。

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金融資産の譲渡とは?

まず、金融資産とは、貸付金や売掛金といった金融債権等のことです。
そして、金融資産の譲渡とは、譲受人に対して全部または一部の金融資産の支配権を渡すことでしょう。
「全部または一部」がポイントです。この金融資産を譲渡する場合、全て渡すだけではなく、分解して渡すなど、いろんな方法があります。

例えば、全てを譲渡しちゃう場合では、譲渡人は譲渡後は全く関わりません。そのため、全てを譲渡する場合は資産の単純な売却と同様の処理になるかと思います。貸付金という資産をそのまま渡しちゃう!あとは好きにしてね!もう関係ないから!みたいなイメージです。

このように全て譲渡する場合は簡単でしょう。厄介なのは、金融債権の権利と義務を分解して譲渡する場合です。譲渡後においても譲渡人が譲受人と一定の権利義務関係を有する場合です。いわゆる一部を譲渡する場合です。

この場合、譲渡した金融資産のうち、支配が移転される部分(譲渡部分と、移転されずに留保される(残る)部分(残存部分があるんです。残存部分では、譲受人との関係が続くことになるのでしょう。

金融資産の譲渡において登場してくるリコース義務、買戻権、回収サービス業務資産といった言葉は、分解して譲渡した場合に出てくるなんです。

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問題文をもとに解説!

では、ここで、問題を作ってみました。この問題に沿って、解説していきます。

「当社は、貸付金(帳簿価額 5,000円をA社へ譲渡し、現金収入5,500円(時価)を得ました。この貸付金の回収業務は引き続き当社が担当することになり、回収サービス業務資産の時価は260円です。この貸付金の回収が延滞した場合に買い戻すリコース義務を負い、時価は280円です。また、将来この貸付金を買い戻すことができる権利(買戻権)を有し、その時価は200円です。この場合の譲渡時の仕訳を示しなさい。」

上記のような問題を解いていきましょう!
問題を解く上で、筆者が初めてこの種類の問題に取り掛かったときに、個人的に疑問に思っていたポイントをいくつか解説していきます。

貸付金の帳簿価額が現金収入(時価)を上回る理由は?

まず気になるのが、貸付金の帳簿価額より譲受人の購入価格の方が高い点ではないでしょうか。取得原価よりも高く買うなんて譲受人は損じゃないか。そう思いませんか。

答えは、損ではないでしょう。なぜなら、利息分の上乗せがそれ以上にあるからだと思います。

例えば、100万円を1年間銀行から借りたとして、返す時には、金利分も加えた101万円(金利1%の場合)を返さなければいけません。このように、お金を借りたら、その額以上に返さなければならないのであり、この問題の場合、譲受人は5,500円で買っていますので、500円より高い金利が設定されていると推測できるかと思います。

回収サービス業務資産とは?

回収サービス業務とは、「債権を回収する仕事」のことです。お金を取り立てたり、記録を管理するイメージでしょう。

この回収サービス業務を行う企業のことをサービサーと呼びます。
誰が回収するのかは、譲受人と譲渡人などで決めるものです。今回の問題には、問題文に書いてあるとおり譲渡人である当社が回収することになっています。

繰り返しますが、なぜ当社がするのかというと、この契約(金融資産の譲渡)の取り決めでそうなっているからです。ここは問題文によるところです。

回収するのが譲渡人という設定はよくあります。なぜなら、譲渡人の方が債務者のことを熟知しているからというような理由もあるのではないでしょうか。

回収サービス業務資産はなぜ資産なのか

次に、なぜ「資産」なのか。それは、将来的に、借り手から利息・元本を回収すれば、見返りとしてお金をもらえるからです。回収業務は、労力は必要ですが、その分、そこからお金を生み出しているので資産となります。

ちなみに、回収サービス業務に対する支払として、金利部分のキャッシュフローからコストは賄われていると思っています。

回収サービス資産は未収収益として計上すると思います。

もう一つ大事な論点があります。それは、回収サービス業務は、譲渡する前から存在しているという点です。元々、貸付金の構成要素なんです。考えてみれば当たり前ですが、譲渡してもしなくても、お金を取り立てたり、記録を管理する人は必ず必要ですよね。

買戻権とは?

買戻権とは、売買代金等を返すことにより、契約解除をし、所有権を取り戻すことです。この買戻権を使用した場合、譲受人は手放したくなくても、売り渡さなければなりません。買い戻しを実行するときは、譲渡人(当社)にとってメリットがあるときしかしないでしょう。メリットがあるので、買戻権資産になります。

リコース義務とは?

リコース義務とは、この貸付金の回収が延滞した場合に、譲渡人が買い戻す義務を負うことです。

例えば、借り手が倒産してしまったら、その譲渡債権は紙屑となってしまいます。そうなると、譲受人は、当該債権を譲渡人に売って、引き取ってもらうことになるでしょう。これは、当社(譲渡人)にとって、デメリットです。

ちなみに、リコース義務の計算方法は、「債権価額×貸倒率」となるのではないでしょうか(自信はありません。)貸倒率は、わかりにくければ倒産する確率とでも思ってもらえるといいでしょう。リスクは負債に入れておこう!というわけです。
リコースとは、英語で、償還や遡及の意味があるようです。

譲渡部分と残存部分とは?

譲渡部分とは、貸付金のうち、新たな金融資産(負債)として譲渡された部分のことです。

残存部分とは、貸付金のうち、譲渡されずに引き続き当社が有している部分のことでしょう。

譲渡部分とは新しく発生したもの。残存部分とは既存のもの。こんな理解で良いかと思います。

つまり、譲渡部分には、買戻権リコース義務があります。これらは譲渡したことによって発生したものだからです。

残存部分には、回収サービス業務資産があります。元々、回収サービス業務というのは存在しています。そのまま当社が仕事する部分であり、残ります。

仕訳の際は、譲渡部分と残存部分とで分けて考えることになります。この譲渡部分と残存部分との割合で、貸付金を配分して仕訳します。詳しくは、仕訳する際にお話しします。

実際に仕訳をしてみよう!

譲渡部分の計算

まずは、譲渡部分を仕訳してみましょう。

譲渡部分に関係あるのは以下の部分です。

○貸付金(帳簿価額 5,000円)
○現金収入5,500円(時価)
○リコース義務 時価 280円
○買戻権 時価 200円

これを仕訳していきます。まず、5,500円入ってきます。これを借り方に持ってきます。次に、リコース義務は負債ですので貸し方へ、買戻権は資産ですので借り方に持ってきます。

すると、

(現金)5,500  (リコース義務)280
(買戻権)200

こんな感じの仕訳になります。では、次に、貸付金勘定を考えましょう!

帳簿上の貸付金が5,000円とありますが、この貸付金(債権)のうちの譲渡部分の割合分が譲渡したことにより無くなり、その代わりに現金5,500円が入ってきています。

譲渡金額としては、現金(入金額)+ 新たに発生した資産 − 新たに発生した義務になります。
よって、5,500円+200円−280円=5,420円となります。

譲渡金額は少しわかりにくいので、言い換えると、「譲渡したものの価値」となるでしょう。「譲渡したもの=受け取ったもの」ですので、当社が受け取ったものを考えます。現金を受け取り、買戻権を手に入れていますが、リコース義務を負っています。

よって、 現金+買戻権−リコース義務になります。

譲渡部分が 5,420円ということですね。

残存部分は、回収サービス業務資産ですので、260円と問題文に書いてあります。

よって、元々保有していた金銭債権(貸付金)の5,000円(帳簿価額)のうち、譲渡部分を計算します。

5,000 × 5,420/(5,420+260) =  5,000 × 5,420/5680 =  4,771(小数点以下四捨五入)

よって、元々持っていた帳簿上の貸付金(5,000円)のうち、4,771円が譲渡部分ということになります。譲渡されているので、資産が消えています、よって、貸方に貸付金4,771円を持ってきます。

(現金)5,500  (リコース義務)280
(買戻権)200  (貸付金)4,771

こうなります。これでは左右が一致しませんね。一致しない部分(差)は、損益勘定である「貸付金売買益」で処理します。

つまり、

(現金)5,500  (リコース義務)280
(買戻権)200  (貸付金)4,771
         (貸付金売買益) 649

これが、譲渡部分の仕訳になります。

残存部分の計算

次は、残存部分を仕訳してみましょう。

残存部分に関係あるのは以下の部分です。
回収サービス業務資産 260円 時価

元々保有している帳簿上の貸付金のうち、残存部分は、

5,000 × 260/(5,420+260) =  5,000 × 260/5680 =  229(小数点以下四捨五入)

よって、元々持っていた帳簿上の貸付金(5,000円)のうち、229円が譲渡部分ということになります。

229円というのが帳簿価額になります。回収サービス業務資産の時価としては、260円でしたが、帳簿価額としては229円だったというわけです。

残存部分の仕訳は、

(回収サービス業務資産)229 (貸付金)229

となります。

譲渡部分と残存部分の合算

譲渡部分と残存部分を合算すると、

(現金)5,500          (リコース義務)280
(買戻権)200          (貸付金)5,000
(回収サービス業務資産)229   (貸付金売買益) 649

となります。リコース義務と買戻権は新たな金融資産・負債ですので、時価により計上します。貸付金と回収サービス業務資産は、既存のものですので、帳簿価額となります。

まあ、これは株を購入した場合とかで考えれば当たり前ですよね。株を購入した金額で、帳簿に記帳しますよね。取得原価は、新しく取得した時点での時価で仕訳すると思います。今回も、新しく発生した時点での時価で、リコース義務と買戻権を仕訳するというわけです。

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まとめ

金融資産の譲渡における仕訳のポイントは2つあると思います。

譲渡部分と残存部分を分けて考える点と、回収サービス業務資産は譲渡前から継続しているものであり、仕訳の際は帳簿価額を使う点です。

また、回収サービス業務、リコース義務、買戻権といった言葉の意味を理解することも大事です。

丸暗記ではなく、流れをイメージしながら解けるようになると、理解はさらに深まります。頑張っていきましょう。

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