刑事ドラマや資格勉強において、罰則について疑問に思った方はいませんか。禁錮や懲役という言葉はよく耳にするのではないでしょうか。
また、普段運転する方であれば、日々取り締まりをしているスピード違反や一時停止に捕まり反則金を支払った際に、反則金は罰金とは違うのか、気になりますよね。
この記事では、現在の日本の罰則について、小学生でもわかるように心がけて、わかりやすく解説していきます。
※この記事は、あくまでも筆者の意見・考えによるものです。
現在の日本における3つの罰則とは?
現在の日本において、罰則は大きく3つあります。
刑事罰、行政刑罰、秩序罰の3つです。
この3つの違いはとてもややこしいですが、2つの観点から分類されます。
1 何に対しての罰なのか
2 刑罰かどうか
この2つの観点から、分類できます。
何に対しての罰なのか
まず、1つ目の分類の「何に対しての罰なのか」ですが、
行政上の義務違反に対してなのか、
殺人や窃盗などの犯罪に対してなのか、
で分けられます。(※あくまでもイメージが湧きやすいようざっくりと書いており、正確ではありません。)
前者に当てはまるのが、行政刑罰と秩序罰です。これらはまとめて行政罰と言われることがあります。
「行政」とついているのでわかりやすいですよね!例えば、酔っ払い運転や信号無視などの道路交通法違反や無許可営業罪などです。行政と関係のあるものというイメージでしょう。
一方、後者に当てはまるのが刑事罰になります。行政に関係のない、一般的な犯罪・事件だと思ってもらえれば良いのではないでしょうか。
行政上の義務違反に対して・・・行政刑罰、秩序罰
殺人や窃盗などの犯罪に対して・・・刑事罰
刑罰かどうか
次に、2つ目の分類として、「刑罰かどうか」で分けられます。刑罰なのは、刑事罰と行政刑罰です。刑罰ではないのが、秩序罰になります。
刑罰・・・刑事罰、行政刑罰
刑罰ではないもの・・・秩序罰
刑事罰と行政刑罰は刑罰であり、刑罰には、死刑、懲役、禁錮、拘留、罰金、科料 の6種類あります。刑罰は、裁判所が刑事事件訴訟法等に基づいて科すものです。
ここで、行政刑罰も裁判所が科すの?と疑問に思ったかもしれませんね。
結論、行政刑罰も裁判所が科します。
行政刑罰も、刑法上の刑(死刑、懲役、禁錮、拘留、罰金、科料の6種類)を科すものですので刑罰には変わりはありません。そのため、刑法総則の適用を受け、刑事訴訟法の手続きに従って裁判所が科します。
一方、秩序罰は刑罰ではありません。
秩序罰は刑罰ではありませんので、地方自治法に基づいて普通地方公共団体の長が科すものです。秩序罰は過料と言われます。過料の例としては、交通反則通告制度に基づく反則金があります。
反則金とは、6点未満の軽微な交通違反に対して課せられる金のことで、例えば、街中で取り締まっている一時停止やスピード違反などです。
これらは反則金を払えばOK。刑罰である「罰金」は払わなくて良くなります。いちいち軽微なものも刑罰になってしまったら、裁判所も市民も大変ですよね。
以上、ざっくり3つの罰(刑事罰、行政刑罰、秩序罰)についての分類を説明しました。ここからは、少し詳しくそれぞれみていきましょう。
刑罰とは?
刑罰とは、上記でも紹介したように、刑法上の刑(死刑、懲役、禁錮、拘留、罰金、科料の6種類)のことです。
刑法には次のように規定されています。
(刑の種類)
第九条死刑、懲役、禁錮こ、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
※刑法8条抜粋
それぞれの刑罰については、刑法11条から17条までに規定されていますので、参考にご確認ください。なお、没収についてはこの記事では触れておりません。
(死刑)
第十一条死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
2死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。(懲役)
第十二条懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
2懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。(禁錮)
第十三条禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。
2禁錮は、刑事施設に拘置する。(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
第十四条死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
2有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。(罰金)
第十五条罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。(拘留)
第十六条拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。(科料)
第十七条科料は、千円以上一万円未満とする。刑法11条から17条抜粋
ここで、禁錮と懲役、拘留の違いについて説明しておきます。
禁錮と懲役、拘留の違いは?
禁錮と懲役、拘留は全て刑事施設に拘置するという内容です。何が違うのでしょうか。
結論、単純に刑の重さが違います。
刑の重さは、懲役>禁錮>拘留の順です。3つの中で一番重いのが懲役、次に禁錮になります。
禁錮刑は刑務所(刑事施設)に拘束するという刑のみで、刑務作業が義務ではありません。過失下水排除等 や無資格投票などの場合です。
懲役刑は刑務所(刑事施設)に拘束するという刑だけではなく、刑務作業が義務となっています。殺人罪や傷害罪などの場合です。
拘留は、1日以上30日未満を刑務所(刑事施設)に拘束する刑ですが、拘留の判決が下されるのはレアケースです。
執行猶予とは?
執行猶予とは、刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に何事もなければ刑罰の執行を無しにする制度です。
比較的軽い懲役・禁錮の刑罰の場合に執行猶予は認められます。例えば、懲役20年の刑だった場合は、執行猶予の制度は認められません。
例えば、「懲役3年に処する。5年間執行を猶予する。」と判決を言い渡された人でしたら、判決を言い渡された後、すぐさま刑務所へは行きません。
社会に戻り、5年間罪を犯すことなく生活することで懲役3年の刑の効力は消滅します。これが執行猶予というものです。
ただし、執行猶予付きの判決も前科になるようです。不起訴処分の場合は前科はつかないようです。
行政刑罰と秩序罰の違い
行政刑罰と秩序罰は、地方自治法には東京都や大阪府などの都道府県の条例において、罰に関する規定を儲けることができる旨、以下のように書かれています。
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
地方自治法14条3項抜粋
つまり、条例で行政刑罰と秩序罰の規定を設けることができます。
ちなみに、上記条文を読んでいただければわかりますが、条例では死刑の規定を設けることができないようです。
ここで大事なのは次の点です。
✔️行政刑罰は、裁判所が刑事事件訴訟法等に基づいて科します。
✔️秩序罰は、普通地方公共団体の長が地方自治法に基づいて科します。
この「誰が科すか」の観点はとても重要です。
また、秩序罰(過料)は、規則にも5万円以下の過料に関する規定を設けることができます。しかし、規則では、条例の委任があったとしても刑罰規定(行政刑罰)を設けることはできません。
まとめ
現在の日本において、罰則は刑事罰、行政刑罰、秩序罰の3つあるということを理解してもらえれば良いかと思います。
そして、刑事罰と行政刑罰は刑罰ですので、刑法上の刑が科されます。刑法上の刑とは、死刑、懲役、禁錮、拘留、罰金、科料の6種類のことです。刑法上の刑は、裁判所が刑事事件訴訟法等に基づいて科すものでしたよね。
行政刑罰は、「行政」と名前がついており、条例で規定を設けることができますが、科すのはあくまでも裁判所であり、刑法総則の適用があり、刑事事件手続法等の手続きに従って科される点が大事でした。
一方で、秩序罰は刑罰ではありませんので、刑法ではなく、地方自治法に基づいて、普通地方公共団体の長が科すものです。
それぞれの違いを理解することが大事です。
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