行政書士や司法書士などの資格において、行政法や地方自治法、国家行政組織法などの勉強をしていると、行政機関という言葉が登場します。
行政機関とはどのようなものでしょうか。ざっくり国や東京都、神奈川県などの都道府県庁のことじゃない?と思っている方が多いと思います。
この記事では、行政系の法律を勉強し始めた初心者向けに、小学生でもわかるように「わかりやすさ」を心がけて、解説していきます。
行政機関は2種類ある?
はじめに、行政機関について説明していく前に、伝えておくべきことがあります。それは、行政機関について考え方が2種類あるということです。
- 行政作用法上(学問上)の行政機関
- 国家行政組織法上の行政機関
学問上とは、法令で定められてはいないけど勉強する上で作られたもの、そういうイメージでいいと思います。
繰り返しますが行政機関には、
行政作用法上の行政機関
国家行政組織法上の行政機関
この2つの捉え方(概念)があります。
行政作用法上の行政機関は作用法的行政機関概念という類型であり、主体と外部との関係を基準としています。国や地方自治体で働く職員の役職名やグループ名だとイメージしてください。
国家行政組織法上の行政機関は事務配分的行政機関概念という類型であり、担当する事務分担の単位を基準としています。国の組織名とでもイメージしてください。
このように基準(どうみるのか)が異なるのです。
それでは、それぞれ説明していきます。
行政作用法上の行政機関とは?
行政主体と行政機関の違い
まず、行政機関と行政主体について説明していきたいと思います。行政主体の考え方は知っておいた方が良いので、ここで理解しておきましょう。
行政主体とは、行政をする主体のことで、国や東京都などの地方公共団体、その他の独立行政法人や公共組合などのことです。
つまり、「行政主体は団体名」とでもイメージしてください。会社でいう法人名にあたるのでしょう。
ここで大事なのは、あくまでも行政主体は団体名であり人ではないということです。
行政主体とは団体名ですので、人ではありません。確かに団体名としては「国」や「東京都」ですが、実際に国や東京都などで仕事を回しているのは、「人」ですよね?
沢山の働いている「人」により行政活動は行われています。
「人」に知事や副知事、警察官などの地位・役職を与えて活動しているのです。
これらの人のことを行政機関といいます。
“行政機関とは、行政主体(国や東京都など)で働いてる人のこと!!“
というイメージを持ってもらえれば良いでしょう。
※人とは自然人のことですが、自然人で構成される合議制の機関(例 地方制度調査会)なども含まれます。独任制のものと合議制のものがあるというわけです。例えば知事は独任制ですが教育委員会は合議制です。
簡単にまとめると、行政主体とは法人名、行政機関とは働く人のこと。
こういった認識で良いと思います。
行政主体についてイメージしてもらうために下の図を確認してみてください。この記事ではこれ以上は触れません。

行政機関の種類は?
上の部では、行政主体と行政機関との違い、及び行政機関とは働く人のことですよ!と説明しました。
このパラグラフでは、実際に行政機関とはどのようなものがあるのかを紹介していきます。
行政機関には大きな括りとして、
行政庁、補助機関、諮問機関、参与機関、監査機関、執行機関があります。
図にしてみます。

それぞれ説明していきます。
行政庁とは?
行政庁とは、
行政主体のための意思決定をし、それを外部に表示する権限を持つ機関 |
のことです。
意思表示する人だと思ってください。テレビでよく記者会見を開いていたり、ぶら下がり取材のシーンがありますよね?そこで話している人が行政庁になります。
例えば、岸田総理のように総理大臣、各大臣、小池都知事のように知事、市長が挙げられます。
行政庁には独任制のものと合議制のものがあります。独任制は1人なのに対して、合議制は複数のメンバーで構成されるものです。
✔️独任制 総理大臣、知事、市長など
✔️合議制 内閣、教育委員会、公安委員会など
それぞれ与えられた権限のもと意思決定しています。
補助機関とは?
補助機関とは、
行政庁の仕事を補助する機関 |
のことです。
国の補助機関には、各省庁に設置される副大臣・大臣政務官・事務次官などや、内閣に設置される内閣官房長官・内閣官房副長官など、地方公共団体に設置される副知事・副市長村長・会計管理者などがあります。
課長や部長、一般職員もここに該当します。
「一般的な事務職員」だと捉えてもらうと良いかもしれません。
諮問機関とは?
諮問機関とは、
重要政策や基本的な施策等に関して、行政庁に対して専門的な意見を述べる機関 |
のことです。
諮問とは、辞書では「有識者に意見を求めること」の意味です。どうしても行政庁だけでは判断が偏ってしまいますよね。
そのような行政庁に対して、専門的な見地から意見を述べて、深く政策の立案に関わっていくのが諮問機関です。
諮問機関の意見(答申等)には法的拘束力がありません。行政庁を法律的に拘束しないんです。行政庁はあくまでも「諮問機関の意見を参考にする」という参考意見的なイメージでしょう。
諮問機関の具体例として、
- 地方制度調査会
- 法制審議会
- 中央教育審議会
- 社会保険制度審議会
- 中央環境審議会
- 中央社会保険医療協議会
- 都市計画審議会
などがあります。
参与機関とは?
参与機関とは、
行政庁の意思決定の要件として、議決を行い参与する機関 |
のことです。
行政庁の意思決定のためには、この参与機関の議決が必要だ!というイメージで良いでしょう。参与機関の議決は、行政庁を法的に拘束します。
諮問機関は行政庁でも判断できそうな専門性に留まりますが、参与機関が扱うものは「高度な専門性を有するもの」になります。
違いは以下になります。
- 参与機関-法的拘束力あり
- 諮問機関-法的拘束力なし
この違いがあります。
参与機関の具体例としては、電波監理審議会、検察官適格審査会などがあります。
執行機関とは?
執行機関とは、
行政庁の命令を受けて、行政目的を実現するために実際に実力行使をする機関 |
のことです。
執行機関の具体例として、警察官や消防職員、税務職員があります。
実際に取り締まったり差し押さえたりと、実力行使する人たちですね。
監査機関とは?
監査機関とは、
行政機関の会計処理・事務処理を検査して、適正に処理が行われているのかを確認する機関 |
になります。
民間企業でも、よく「監査」が行われますよね。不正がないか。誤りがないか。行政機関においても、そういったところを検査するのです。
監査機関の具体例として、会計検査院(国)や監査委員(地方公共団体)などがあります。
以上が、行政作用法上の行政機関の説明になります。次に、国家行政組織法上の行政機関について説明します。
国家行政組織法上の行政機関とは?
行政作用法上の行政機関よりもイメージしやすいかもしれません。
簡単に言えば、厚生労働省や文部科学省などの省庁や委員会のことです。
国家行政組織法では、
第一条 第三条 |
このように規定されています。
特に、第3条2項をみていただくと、国の行政機関は、省、委員会及び庁と規定されていますね。
つまり、国家行政組織法上の行政機関とは、各省や、各省に外曲として設置されている庁・委員会のことなんです。
以下に図としてまとめてみました。

これらが国家行政組織法上の行政機関になります。ちなみに、内閣府にも外局は置かれていますので、紹介しておきますね。

まとめ
行政機関には2種類ありましたね。
- 行政作用法上の行政機関
- 国家行政組織法上の行政機関
これら2つの違いをわかっていただけましたでしょうか。
簡単に言えば、行政作用法上の行政機関は、そこで働く「人」を与えられた役割に区分したもので、国家行政組織法上の行政機関は、国に設置されている省と省の外局(庁・委員会)のことです。
それぞれ理解していただけたようでしたら幸いです。行政法や地方自治法を学ぶ上で基本となる知識ですので、しっかり理解してもらえると良いかと思います。
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