法人事業税とは?仕訳や計算方法をわかりやすく解説【簿記・会計】

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簿記・会計を勉強していると、財務諸表論の税金の分野において、「事業税」という言葉が登場します。

事業税とはそもそもどういう税金なのでしょうか。また、計算方法やその他の税金との違いについて、簿記や税金を初めて勉強した方でもわかるように、分かりやすく解説します。

※筆者の偏見や独自の意見によるものです。ご了承ください。

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事業税とは?

事業税とは、法人や個人の行う事業に対して、都道府県が法人や個人事業主に課す税金のことです。「事業税」と言っていますが、「法人事業税」や「個人事業税」のことです。
※この記事では、法人に絞って解説します。

繰り返しますが、事業税とは、「法人事業税」のことです。法人の所得に基づいて課税される税金となります。

ここで、法人にかかる税金としては、以下の3つです。

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税(事業税)

これら3つの税金のことを「法人3税」と言います。

簿記・会計では、これら3つの税金を合わせて「法人税、住民税及び事業税」であったり「法人税等」という勘定科目が使われます。

「法人税、住民税及び事業税」とは、決算において課税所得を基準として計算された、法人が納付すべき税額の総称で、上記で挙げた「法人税、法人住民税、法人事業税」の3つで構成されています。

これら3つの法人にかかる税金(法人税、住民税及び事業税)の中の「法人事業税(事業税)」に関してこの記事では詳しく説明します。

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法人3税の違いとは?

では、法人税と法人住民税、法人事業税は何が違うのでしょうか。

法人税

法人税は、収益(売上)ではなく、「法人の課税所得」に課税されます。この課税所得に一定の税率(法人税率)を乗じた金額が当期の法人税になります。

式で表すと、

✔️ 法人税額 = 課税所得 × 法人税率

となります。イメージを持ってもらうため、ざっくりと説明しています。

法人税国税(国に支払う税金)の一種になります。

住民税とは

住民税は名前の通り、その会社が位置している地域(地方自治体)に支払う税金のことです。

法人の事務所等が所在する都道府県及び市町村がそれぞれ課税するものであり、道府県民税市町村民税で構成されています。

住民税は、国税ではなく地方税です。

ちなみに、蛇足ではありますが、地方自治法では、地方公共団体の区域に住所を置く国民、外国人、法人はすべて「住民」と法律で規定されています。つまり、「住民」には法人も含まれるんです。法人もその地域の構成員ということです。法人も「住民」として地域貢献しなければいけない仕組みなんです。

住民税の計算方法ですが、均等割法人税割の合計で計算します。

均等割・・・資本金等の額、従業者数に応じて定額が課されるものです。均等割は道府県民税と市町村民税で構成されています。

法人税割・・・法人税額に応じた負担を求めるものです。法人税割も、道府県民税と市町村民税で構成されています。

簡単に言えば、均等割はその年の利益に関係なく、会社の規模に応じて払うもの。法人税割は、その年における会社の生み出した利益に応じて払うものです。

まとめると、

✔️ 法人住民税 = 均等割(均等割の道府県民税 + 均等割の市町村民税) + 法人税割(法人税割の道府県民税 + 法人税割の市町村民税)

というわけです。

事業税とは

事業税とは、「法人が行う事業そのものに課される税」であり、その事務所等が所在する都道府県が課税します。こちらも地方税です。

事業税の目的ですが、法人が事業を行う際に使用する公共サービスの維持費を一部負担させることが課税の目的です。

事業税は、所得割付加価値割資本割の3つで構成されています。

式で表すと、

✔️ 事業税 = 所得割 + 付加価値割 + 資本割

となります。

ちなみに、資本金1億円超の法人に対しては、所得割・付加価値割・資本割が課されますが、資本金1億円以下の法人に対しては、所得割のみが課されます。
※事業税の計算式についてはこの後さらに詳しく解説します。

法人3税についてざっくり違いを理解できましたでしょうか。

国に収める法人税の税率のことを法人税率と言いますが、法人税だけではなく地方自治体に支払う法人住民税や法人事業税も含めた税率のことを「法人実効税率」と言います。

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事業税の計算方法を詳しく解説

先ほども記述しましたが、事業税は、所得割と付加価値割と資本割の3つで構成されています。

✔️ 事業税 = 所得割 + 付加価値割 + 資本割

所得割から順に説明します。

所得割

所得割とは「所得に応じた税」のことです。各事業年度の所得金額に比例して課税されます。企業がその会計年度で稼いだ額である所得金額に対して事業税率を乗じて計算します。

事業税の所得割 = 所得 × 事業税率

事業税率ですが、都道府県によって異なります。例えば、東京都では、次のようになっています。

【普通法人で資本金1億円超・3都道府県以上の場所に事業所がある場合】

※軽減税率不適用法人かつ令和2年4月1日以後に開始する事業年度 1.18%

この「事業税の所得割」については、企業の財務諸表において、損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」という項目に含まれます。

また、事業税の所得割の計算の元になる所得ですが、ここでは、「税引前当期純利益から損金・益金などを調整したもの」とざっくりイメージしてください。

事業税の所得割額は、基本的には決算時に仕訳します。

(法人税、住民税及び事業税)1,000 (未払法人税等)1,000

こんな感じで仕訳します。1,000という数字は具体例です。

決算処理をすることで、はじめて「一会計年度の所得」が分かります。

また、決算の時には実際には税金を支払っていません。そのため、将来支払わなければいけないお金として負債の勘定科目であ未払法人税等という勘定科目を使い仕訳します。税金を支払うのは、次年度となります。

ところで、赤字会社は所得がゼロ以下のため、所得に対しては課税されません。したがって、所得割額は0円となります。ただし、付加価値割や資本割といった外形標準課税は支払う必要があります。

付加価値割と資本割

資本金1億円超の法人に対しては、所得割に加えて、「付加価値割」と「資本割」が課されます。これらの2つのことを「外形標準課税」と言います。

外形標準課税とは、資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の課税制度であり、所得割では課税の基準が「所得」でしたが、外形標準課税では、「企業の規模(外形)」が課税の基準となります。

法人の事業活動の規模をできるだけ反映させるためですね。従来の法人事業税は、所得のみにを課税対象としていたため、事業活動の規模との関係性が反映されていませんでした。

外形標準課税とは具体的には、事業所の従業員数や給料、退職金、資本金、手数料など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を算出する課税方式です。

普通法人の中でも、資本金の額(又は出資金の額)が1億円を超える普通法人のことを「外形標準課税法人」と言います。

外形標準課税は、あくまで「資本金」が1億円を超えているかどうかで判定します。 したがって、資本金が1億円以下だが、資本金に資本準備金などを合わせたら1億円を超過してしまうといった場合でも、外形標準課税の対象とはなりません。

「外形」を基に算出する税として、「付加価値割」と「資本割」があるのです。

付加価値割

付加価値額は、収益配分額に単年度損益を差し引きすることで求めます。

✔️ 付加価値額 = 収益配分額 ± 単年度損益

上記で求めた付加価値額に対して、税率を乗じて、付加価値割額(付加価値を基準とした課税額)を算定します。

✔️ 付加価値割 = 付加価値額 × 税率

東京都だと、付加価値割にかかる税率が1.26%になります。

収益配分額とは、「報酬給与額」と「純支払利子」と「純支払貸借料」の合計のことです。

報酬給与額

報酬給与額とは、報酬、給料、賃金、手当、賞与といった所得税で「給与所得」とされるものや、退職金などの「退職所得」とされるものも対象となります。 役員退職金(役員退職慰労金)も原則として報酬給与額の対象となります。

純支払利子

支払利子から受取利子を引いたものです。支払利子とは、借入金の利息や社債の支払利息などがあり、受取利息には、貸付金の利息や預貯金の受取利息などがあります。

純支払利子がマイナスになる場合(受取利子の方が大きい場合)は、純支払利子ゼロと扱います。

純支払賃借料

支払賃借料から受取賃借料を引いたものです。土地や家屋に係る賃借料ですね。支払賃借料よりも受け取り賃借料の方が大きい場合は、純支払賃借料はゼロとして扱います。

資本割

資本割は、資本金等をもとに算出します。資本金等とは、資本金と資本準備金の合計です。

✔️ 資本金等 = 資本金 + 資本準備金

資本金等に税率を乗じて、資本割額(資本金等の金額を基準とした課税額)を算定します。

✔️ 資本割 = 資本金等 × 税率

東京都だと、資本割にかかる税率0.525%になります。(外形標準課税法人・超過税率対象の場合)

損益計算書では、付加価値割と資本割は、原則として「販売費及び一般管理費」に計上します。

ちなみに、事業税の付加価値割と資本割は、租税公課に含まれます。租税公課とは、税務上経費として認められているもので、事業税以外に、印紙税や自動車税、固定資産税、不動産取得税などがあります。これらの租税公課は、損益計算書上の販売費及び一般管理費に計上されるのです。

法人事業税は、上記で説明したように、所得割と付加価値割と資本割の合計で求めることができます。

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まとめ

法人3税の違いは理解できましたでしょうか。法人が支払わなければいけない税金は1種類だけではないんです。その中でも、大きな割合を占めているのが「法人税」「法人住民税」「法人事業税(事業税)」の法人3税です。

この3つの税の違いをイメージできれば、簿記や会計の理解度が深まっていくと思います。

また、この記事では「事業税」に着目しました。事業税といっても、所得割、付加価値割、資本割の3つで構成されていることが分かったと思います。それぞれ仕訳の方法も違いましたね。所得割は、「法人税、住民税及び事業税」という勘定科目を使いますが、付加価値割と資本割は、「租税公課」という勘定科目を使います。

ぜひ、事業税の仕組みを理解して、簿記・会計の知識を深めていってもらえれば嬉しく思います。

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