割引現在価値とは?考え方や計算方法をわかりやすく解説

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経営や経理の勉強をしていると、「割引現在価値」と言う言葉を耳にします。

特に、M&Aにおいて企業価値を評価する際に使い、現在の価値をなるべく正確に把握しておかなければ、過剰評価してしまい、実態よりも高額で買収してしまう可能性があります。

また、「投資したはいいものの期待しすぎたせいで見込んでいたリターンを得られなかった。」そういった失敗につながります。

今回は、割引現在価値を、初心者向けに、小学生でもわかるように説明します。

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割引現在価値とは?

まず、割引現在価値とは何か。答えを端的に言えば、

「将来」得られると見込んだ価値を、仮に「現在」受け取るとしたら、いくらになるのかを計算したもの

のことです。

“将来このくらいの価値があると思うけど、その価値を現在の価値に置き換えたらいくらだろう?”

これを表したのが「割引現在価値」になります。ちなみに、「割引現在価値」とただの「現在価値」は同じ意味だと思ってください。

将来受け取ることができる価値を現在の価値に変換した時に、単純にイコールにはなりません。定期預金を例にして見てみましょう。

✔️具体例
◎年利5%(複利)の定期預金(原則として一定期間引き出さない預金)で100万円預けた場合

現在  100万円 
1年後 105万円 100万×(1+0.05)=105万円
2年後 110.25万円 105万×(1+0.05)=110.25万円
3年後 115.7625万円 110.25万×(1+0.05)=115.7625万円

このように、1年後、2年後、3年後と時が進むにつれ、100万円が105万円、110.25万円…と増えていきます。

このケースの場合、1年後の価値は105万円となりますが、この価値を割引現在価値で表すといくらになるでしょうか。

答えは、100万円です。なぜなら、1年後に年利により5%増えていますが、現在における価値としては100万円だからです。

同様に、2年後の110.25万円ですが、これを割引現在価値に変換すると100万円になります。また、3年後の115.7625万円を割引現在価値に変換すると100万円になります。

つまり、1年後の105万円と2年後の110.25万円と3年後の115.7625円と現在の100万円は価値が等しいということです。

これが、「割引現在価値」の考え方です。将来の価値から金利を考慮して現在の価値を算出します。

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割引現在価値の計算式(算出方法)

では、割引現在価値を求める一般式を見てみましょう。

今回も、上で取り上げた具体例をもとに一般式を算出していきましょう。

✔️具体例
◎年利5%(複利)の定期預金(原則として一定期間引き出さない預金)で100万円預けた場合

現在  100万円 
1年後 105万円 100万×(1+0.05)=105万円
2年後 110.25万円 105万×(1+0.05)=110.25万円
3年後 115.7625万円 110.25万×(1+0.05)=115.7625万円

1年後の金額(105万円)から現在の価格(100万円)を算出するには、

105万円 ÷ (1+0.05) = 100万円 

となります。

次に、2年後の価格(110.25万円)から現在の価格(100万円)を算出するには、

110.25万円 ÷ (1+0.05) = 105万円
105万円  ÷ (1+0.05) = 100万円

となります。これを繋げて一つの式にすると、

110.25万円 ÷ (1+0.05)  ÷ (1+0.05) = 100万円

となり、結果的には

110.25万円 ÷ { (1+0.05) ^2  } = 100万円

となります。

3年後も同様に処理すると、

115.7625万円 ÷  { (1+0.05) ^3  } = 100万円

となります。さらに4年後、5年後となった場合は、この乗数がその年数に上がっていくことになります。

よって、一般式としては、以下の式が成り立ちます。

割引現在価値 = 将来価値 ÷ { (1+金利) ^n }   n=年数 ^=乗数

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企業価値評価で使われる割引現在価値の求め方

上記では、あくまでも定期預金などの金利のみにスポットを当てて、割引現在価値の求め方を説明しました。

しかし、割引現在価値が使われるのは、上記のように金利のみを考慮することがメインではなく、M&Aのための資料として「企業価値を評価することに使うことが目的です。

企業の価値も定期預金と同様に、まず将来の価値を計算して、次にその将来価値をもとに現在価値を算出して評価します。

将来の価値から現在の価値を算出するには、金利以外にもさまざまな種類があります。この変化要因のことを割引率といいます。

Q.割引率とは?
将来受け取る価値を現在において受け取ろうとした場合にどの程度割り引くのかを決める割合のことです。

言い換えれば、将来の価値を割り引いて現在の価値を算出する時の1年あたりの割合のことです。割引率が難しい人は、金利のことだと思っておけばいいでしょう。

ちなみに、英語では割引率のことをディスカウント・レートといいます。

では、改めて割引現在価値の計算式をみてみましょう。

PV = CF(n) ÷ ( 1+r ) ^n

こちらが計算式になります。「PV」とはpresent valueの略称で現在価値のことです。「CF」はキャッシュフローの略称で、CF(n)でn年後のキャッシュフローという意味です。

「r」はrateの頭文字で、割引率のことです。先ほど紹介した金利をもとに現在価値を算出する計算式と似てますよね。ただ、金利という言葉が割引率に変わっただけです。

企業価値を算出するときの割引率(r)には、WACCを用いることが多いです。

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割引率の1つ「WACC」とは

WACCとは資本コストのことです。資本コストとは、企業が資金調達する場合にかかるコストのことです。

WACCは、Weighted Average Cost of Capitalの略称です。和訳すると、加重平均資本コストとなります。

WACCは、企業の資金調達にかかるコストのことですが、この資金調達には2つの方法があります。

銀行などから借金をする方法と株券を発行して株主から資本金を得る方法の2つです。前者のお金を他人資本と呼び、後者のお金を自己資本と呼びます。

資本コストは、銀行の利子や社債の支払利息などの「負債コスト他人資本コスト)」と、株主への配当金などの「株主資本コスト自己資本コスト)」に分けられます。

この2つのコストを加重平均したものがWACCになります。(この記事では、この計算方法は説明しません。)

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まとめ

この記事では、割引現在価値について説明しました。

割引現在価値とは、「将来」得られると見込んだ価値を、仮に「現在」受け取るとしたら、いくらになるのかを計算したものです。この考えを習得するだけで、一気に理解度は高まると思います。

その計算式は、

割引現在価値 = 将来価値 ÷ { (1+金利) ^n }   n=年数 ^=乗数

このようになります。この計算式は、割引率に「金利」のみを考慮した場合です。企業価値を分析するには、WACC(資本コスト)と言う割引率を使用します。

割引率を使った計算式は、

PV = CF(n) ÷ ( 1+r ) ^n  r=割引率 PV=現在価値 CF=キャッシュフロー

このようになります。ただ、上の計算式の「金利」が「r(割引率)」に変わっただけです。

この基本となる考え方を身につけ、さらに発展させていきましょう!

 

 

 

 

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