心裡留保とは何か?わかりやすく解説!【民法・行政書士と宅建向け】

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心裡留保とは一体なんだろう?行政書士や宅建などの資格の勉強をしていると、民法科目において頻出分野になります。

今回は、心裡留保について詳しく説明しましょう。

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条文を確認しよう!(民法93条)

まずは、心裡留保について定められている民法93条(条文)を確認してみましょう。

民法第93条 心裡留保

“意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は無効とする”

条文は少しわかりにくいかと思います。なので、噛み砕いてみると次のようになります。

民法第93条(言い換え)

「契約します。」という意思表示は、たとえ意思表示する者にそのつもりはなく軽い冗談であったとしても、効力が生じて原則有効となる。ただし、意思表示された側が、冗談であることを知っている(悪意)か、もしくはちょっと考えたり行動したりすれば知ることができた(有過失)場合は、例外としてその意思表示は無効となる。

どうでしょう。少しは理解しやすくなりましたか。

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「心裡留保」の意味

ここで、心裡留保という言葉を「心裡」と「留保」に分けて見てみましょう。

  • 心裡・・・「心の中、心のうち」
  • 留保・・・「意図的にとどめておく」

心の中を意図的に留めておく…つまり、「心の中に本当の考えを留めておいて、思っていないことを相手に伝えること」が心裡留保です。

✔️ 心裡留保=冗談

と覚えておけば問題ありません。

心裡留保の場合、表意者の表示に対応する内心の効果意思(考え・気持ち)がないので、本来表意者の意思表示は無効になるべきです。

しかし、相手方を保護する必要があるため、原則有効となっています。

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本人と相手方との関係

実際に、本人と相手方との関係において、どのような場合に有効・無効になるのかを詳しくみていきましょう。

有効になる場合

有効になる場合は、相手方を保護する必要があるということになります。

✔️有効になる場合

  • 相手方が善意無過失の場合(相手方は、心裡留保(冗談)だと知らなかった。さらに、知ることができなかった場合)

この条件を満たせば心裡留保(冗談)は有効になります。ここで注意が必要なのは、「善意かつ無過失」ということです。

契約が有効になるためには、善意と無過失の両方を満たさないといけません。善意だけど有過失の場合は無効となってしまいます。

※善意=知らない、悪意=知っている、有過失=落ち度がある、無過失=落ち度がない

相手方は冗談で言ってると知ってるのに、それが有効になってしまったら、日常会話をかなり慎重にしないといけなくなります。

友達との会話でも、「車あげる!」なんて言うと、契約が成立しちゃうんですよ?

また、冗談だとちょっと考えればわかる場合も同様です。冗談を言っている人の状況・背景を何も考えずに、ただただ鵜呑みにするだけで契約が成立することになっちゃいます。

普通は、契約するには、本当にこの商品は便利なのか、どこか壊れているところはないか、他の店舗と比べて安いのかなど、しっかり調べますよね。

それをしないで、冗談だけ言われて鵜呑みにするのは、相手方も不注意ですよね。

意外と冗談が有効となる場合は少なそうですね。

相手方が善意かつ無過失 👉 有効

無効になる場合

次に、心裡留保が無効となる場合を確認しましょう。無効となる場合は2つあります。

✔️無効になる場合

  • 相手方が悪意の場合(冗談だと知らなかった場合)
  • 相手方が有過失の場合(冗談だと知ることができた場合)

この2つのどちらかを満たせば、契約は無効となります。

注意が必要なのは、「悪意または有過失」という点です。悪意と有過失を両方満たさなくてもよく、どちらか一方に当てはまれば、無効となります。

そもそも無効ですから、本人は無効を改めて主張する必要はありません。また、取消しとは違うので、取消しを求める必要もありません。

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第三者との関係

93条2項

では、第三者との関係をみてみましょう。最初に紹介した民法93条(心裡留保)の条文には続きがあるんです。そこで条文の続き(93条2項)を読んでみましょう。

93条2項

“前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない”

第三者は、契約が無効になると不利益を被ることになります。しかし、第三者が善意であった場合には、この規定により保護されることになります。

具体的事例

具体的な場面で、第三者保護を確認しましょう。

(ケース)

Aさんは、Bさんに冗談で、甲土地を売却することを伝えました。一方Bさんは、Aさんが冗談で言っていることを知りながらも、売買契約を締結しました。その後、Bさんは善意のCさんに甲土地を売却してしまいました。

この場合、第三者であるCさんは善意ですので、93条2項の第三者保護が適用されます。BC間の売買契約は有効となり、Cさんは甲土地を取得できることになります。

ここで問題になるのが、「登記の有無」と「過失の有無」でしょう。

Cさんが登記を備えていなかった場合

Cさんが善意だけど、登記をしていなかった場合はどうでしょうか。

この場合も、BC間の契約は当然に無効とはなりません。Cさんは未登記でも保護されます。

また、たとえAさん(本人)が、その後に登記を取り戻したとしても対抗できません。

Cさんに過失があった場合

Cさんは善意だけど、過失があった場合はどうでしょうか。

この場合も、未登記の場合と同様で、BC間の契約は当然に無効とはなりません。Cさんは有過失でも保護されます。

Cさんはとにかく善意であれば保護されるんです。

なぜ第三者は善意だけで保護されるのか

善意だけでこんなに保護されるなんて、、、と思いませんでしたか?

これは、第三者の保護要件の内容は、「本人の帰責性」の大きさとの比較衡量により決まります。

心裡留保では、真意でないと知りながら意思表示をした表意者には大きな帰責性が認められます。よって、第三者は「善意」だけを満たせば保護されます。

錯誤では、「勘違い」は確かに表意者に落ち度はありますが、人間には勘違いはたまにあることです。

よって、本人の帰責性は大きくないです。第三者が保護されるには「善意無過失」を満たす必要があります。

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まとめ

心裡留保の説明はいかがだったでしょうか。

心裡留保という言葉だけ聞くと難しそうに感じますが、「心裡留保=冗談」と変換できれば、理解度は格段に上がります。

「なんだ!簡単なことじゃん!」と思った方が多いと思います。どんどん問題集に取り組んで、マスターしてください。

 

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