未成工事支出金とは?わかりやすく解説【簿記・会計】

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建設業会計において、建設工事の過程の会計処理を行う際に、「未成工事支出金」という勘定科目が使われます。

この勘定科目は、建設業特有の勘定科目になります。

この記事では、簿記の初心者向けに未成工事支出金とは何かを解説します。

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未成工事支出金とは?

未成工事支出金」とは、結論から言うと、

まだ完成していない建設工事にかかった費用

のことです。建設業会計で使われる資産の勘定科目です。

建設業では、請負工事契約に基づいて建設工事を行っています。この建設工事の過程に関する会計処理で用いるのが「未成工事支出金」という勘定科目になります。

未成工事支出金の「未成」とは「まだ完成していない」という意味。つまり、「まだ完成する前における工事の費用」のことです。ここで、工事にかかるお金とは、材料費とか作業員の賃金などです。

では、建設業における建設工事にはどのような費用がかかるのかを具体的に考えてみましょう。建設するにあたっては、材料や作業員が必要になります。危険が伴う作業もあるので保険に加入しなくてはなりません。

これら工事にかかる費用を分類すれば、「材料費」「労務費」「外注費」「工事経費」の4つに区分できます。

  • 材料費は、工事に必要な木材やコンクリートなどの材料代ですね。木材とかコンクリートとかでしょう。
  • 労務費は、工事に直接従事する作業員への賃金等です。工事現場でヘルメットをかぶって働いている人を思い浮かべてください。
  • 外注費は、下請業者への発注額です。全ての工事を1社でできないこともあります。その場合は、下請業者にアウトソーシングしますよね。その費用です。
  • 工事経費は、材料費や労務費、外注費以外の全ての費用のことです。保険料や工事現場を管理している事務員の給料などです。

これら4つの費目が工事の費用としてかかります。

建設業会計の仕訳では、これらの費用を分けずに、全て工事にかかる費用として、「未成工事支出金」としてまとめて処理します。

あくまでも「資産」の扱いですので、工事が完成されれば「費用」として完成工事原価(商品売買でいう売上原価のようなもの)に振り替えられます。

費用の前払いのようなイメージで「資産」となっているということです。前払金は資産であり、材料費を払った時に未成工事支出金を計上しますよね。既に払っているわけですから、前払金の感覚ということです。

そして、工事が完成すれば、未成工事支出金を完成工事原価に振り替えて処理されます。繰り返しになりますが、未成工事支出金はあくまでも

「まだ完成されていない時」
「途中段階」

に使う資産の勘定科目です。

工事が完成すれば、工事原価(費用)として振り替えて処理することになります。

未成工事支出金は、「まだ完成していない工事でかかった費用」のことです。工事が未完成のものは売上として計上しません。そのため、工事中のものは一時的な資産である「未成工事支出金」として計上します。

未成工事支出金がわかりにくい方は、「貸倒引当金」をイメージしてもらえるといいでしょう。資産(のマイナス)を表す勘定科目です。費用をあらかじめ計上しておくものです。いざ貸し倒れた際に、貸倒引当金から切り崩します。

工事にかかる費用をとりあえず蓄えているのが「未成工事支出金」です。これは一時的な「資産」です。通常の製造業で言えば「仕掛品」のことです。工事が完成した時に完成工事原価(費用)に振り替えられます。

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なぜ未成工事支出金が必要なのか

ところで、なぜ未成工事支出金が必要なのでしょうか。結論から言えば、決算日において、当期の利益を正確に算出するためなんです。

当期の利益を計算するのが損益計算書ですよね。損益計算書は、ざっくりいえば収益と費用を表したものです。そして、収益から費用を引いたものが当期の利益(損失)となりますね。

損益計算書は、あくまでも「費用」の勘定科目と「収益」の勘定科目のみがカウントされる表です。つまり、「未成工事支出金」は「資産」の勘定科目なので、費用として計算されません。

もし仮に「未成工事支出金」が存在せず、全て「費用」の勘定科目として処理した場合、売上への計上は翌期なのにそれに関連する費用のみが当期に計上されてしまいます。結果として、売上と経費の対応関係が崩れます。

つまり、費用収益対応の原則に反するというわけです。売上と経費は連動しなければいけません。

そこで、まだ完成していない工事にかかる経費を、資産である「未成工事支出金」として処理しておくことで、当期における損益計算を正確にしているんです。

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未成工事支出金の仕訳

これからは実際に未成工事支出金の仕訳をしていきましょう。

材料費

材料費は、購入時に未成工事支出金勘定に計上します。

決算時は、未成工事支出金から材料貯蔵品に振り替えられます。他の、労務費や外注費などの場合は貯蔵品に振り替えません。

例)✔️ 材料16,000円を掛けで購入した。
(仕訳)
(未成工事支出金)16,000  (工事未払金)  16,000

工業簿記のように、借方を「材料」とはせず、未成工事支出金となります。

例)✔️ 決算日に未使用材料が2,000円あった。
(仕訳)
(材料貯蔵品)2,000  (未成工事支出金)  2,000

未成工事支出金を材料貯蔵品に振り替えることになります。

労務費

労務費は、支出時に未成工事支出金勘定に計上します。

例)✔️ 賃金40,000円を現金で支払った。
(仕訳)
(未成工事支出金)40,000  (現金) 40,000

賃金を支払ったタイミングで未成工事支出金に計上します。

外注費

外注費は、支出時に未成工事支出金で計上します。

例)✔️ 下請業者から外注費30,000円の請求書が届いた。
(仕訳)
(未成工事支出金)30,000  (工事未払金) 30,000

請求書が届いた場合は、工事未払金で処理します。

例)✔️ 下請業者に外注費30,000円を現金で支払った。
(仕訳)
(未成工事支出金)30,000  (現金) 30,000

外注費も未成功時支出金で処理します。現金で支払っているので、貸方は現金になります。

工事経費

工事経費は、支出時に未成工事支出金で計上します。

例)✔️ 保険料10,000円を現金で支払った。
(仕訳)
(未成工事支出金)10,000  (現金) 10,000

保険料は、工事経費に入ります。

基本的な仕訳は以上になります。

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まとめ

未成工事支出金とは何かについて理解できましたでしょうか。

未成工事支出金」とは、端的に言えば、

まだ完成していない建設工事にかかった費用
のことでした。
 
これは、建設業会計に用いる資産の勘定科目でした。
 
未成工事支出金として処理するのは、工事にかかる材料費労務費外注費工事経費の4つです。基本的には、これらの費目ごとに勘定を設けずに、全て「未成工事支出金」で処理します。
 
この点を押さえておきましょう。
 

この記事では、基礎的な部分にしか触れていません。未成工事支出金の考え方を理解し、実践問題を繰り返し解くことで理解がさらに深まり、知識として定着すると思います。

 

 

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