対照勘定法とは?わかりやすく解説【簿記・会計】

スポンサーリンク

簿記を勉強していたら、割賦販売や未着品売買、委託販売、試用販売などの特殊商品売買において、対照勘定法という会計処理方法が出てきます。

いきなり「対照勘定法」と言われても、どんな会計処理方法なのかさっぱりわかりませんよね。

仕訳が分かったとしても、そもそもこの言葉の意味がわからないと知識は定着しないでしょう。

この記事では、簿記の初心者向けに「対照勘定法」について、なるべくわかりやすく説明します。

スポンサーリンク

対照勘定法とは?

対照勘定法とは、「借方と貸方で対となる勘定科目を用いて仕訳を行うことにより、商品売買における売価を備忘記録する方法」のこと。

もう少し端的に言えば、借方と貸方がセットになっている勘定科目を使って記帳する方法のことです。

対照勘定法は、借方と貸方とで、決算書には使わない備忘記録用の勘定科目同士を使って、仮で記録しておく方法です。

対照勘定法は「備忘記録」です。備忘記録とは「忘れないための記録」であり、この備忘記録のための仕訳のことを「備忘仕訳」と言います。

備忘仕訳は、正式な仕訳ではないので貸借対照表や損益計算書といった決算書にその勘定科目が計上されることはありません。

備忘記録なので決算書には直接関係ありません。実際に、具体例があった方がわかりやすいので、具体例を挙げて対照勘定法を確認しましょう。

スポンサーリンク

対照勘定法の具体例〜試用販売の会計処理〜

対照勘定法を用いる具体例として、試用販売の会計処理があります。手許商品区分法を使うこともあるようですが、メインとしては対照勘定法です。

試用販売とは、端的に言うと、

お試し期間後に商品を購入するか決めてもらう販売形態

のことです。

いきなり商品を購入してもらうのではなく、まずお客さま(得意先)に商品を渡して、一定期間試用してもらいます。

そして、試用期間経過後にお客さまから買い取りの意思表示があった場合に売買契約が成立することになります。

この試用販売では、お客さまが買い取りの意思表示をした時点で、売上収益を認識します。

スポンサーリンク

試用販売の仕訳

では、実際に仕訳をしてみましょう。

次の一連の取引の仕訳を示してください。ただし、当社は対照勘定法により会計処理をしています。

(ア)当社(A社)は試用販売を行っています。本日、商品2000円(当期原価率0.7)を、試用のために得意先(B社)に発送しました。

この時の仕訳は、

❶ (試用未収金)  2,000  (試用仮売上) 2,000

になります。

試用未収金ではなく、試用販売契約という勘定を使うこともあります。実際に問題を解く時は、問題の指示にしたがってください。

この2つの勘定科目こそ対照勘定です。試用未収金試用仮売上も、備忘記録ですので、決算書にはどこにも出てきません。

ここでは、売値を使って記録しておきます。仮に売り上げたと記録しておいて、後ほど修正していくことになります。

(イ)商品2,000円(当期原価率0.7)のうち、商品1,400円について、B社から買い取りの意思表示がありました。

ここでの仕訳は、

❷(試用売掛金) 1,400 (試用品売上)1,400

❸(試用仮売上) 1,400 (試用未収金)1,400

になります。上の❷❸のように、2つの仕訳をします。

買い取りの意思表示があった時点で、1,400円の売り上げが確定しますね。そのため、まずは売上として1,400円計上します。

まだ、現金は入ってきてませんので、借方は売掛金で仕訳します。

今回は、試用販売の売り上げですので、試用品売上・試用売掛金という勘定科目を使っています。単純に買ってもらったことに対しての仕訳です。

次に、備忘記録も修正しなければなりません。決算書には関係ない備忘記録ですが、当社(A社)が管理する上では、あとどのくらいの商品がまだ売れずに残っているのかを把握する必要があります。

❶で仕訳したように、帳簿上は2,000円試用品仮売上が計上されています。

しかし、❷により1,400円分は売上として確定しましたので、その分を仮売上から減額しなければいけません。重複しないようにするためです。

そこで、❶とは逆の仕訳をすることで打ち消します。試用仮売上を1,400円減らし、試用未収金も1,400円減らします。そうすれば、帳簿上は試用品仮売上があと600円残っていることがわかります。

(ウ)決算日になりました。決算時の処理をしましょう。ただし、決算整理前残高試算表の「試用未収金」「試用品仮売上」勘定の残高は600円であり、当期原価率0.7は変わりません。

決算時の仕訳は、

(繰越試用品) 420  (仕入) 420

になります。

決算時において、売れずに残っているものは当期の売上原価に含めません。そこで、残っている試用品の「仕入」を「繰越試用品」に振り替えます。

繰越試用品」は「繰越商品」のようなものだと思っておけば大丈夫です。自社が持つ資産として翌期に繰り越します。

対照勘定法にて記録した「試用品仮売上」と「試用未収金」が活かされます。それぞれ残高が600円になっています。

ただし、対照勘定法で記帳されている価格はあくまでも売価です。決算時には売上原価ベースで計上する必要があるので、売価に減価率をかけます。

600円×0.7=420円

よって、原価420円を仕入から繰越試用品に振り替えます。❹の仕訳をしないと、試用品の残りが売上原価に加算されてしまいます。

ちなみに、期首の貸借対照表に、この「繰越試用品」という勘定科目が計上されたままになります。

この期首に残っている「繰越試用品」は、試用品として発送した商品の残りを表しています。そしてそれは、試用売未収金や試用仮売上の原価でもあるということです。

(エ)残りの商品600円(原価率0.7  420円)について、B社より買取しないとの意思表示があり、商品が返品されました。

この時の仕訳は、

(試用仮売上) 600 (試用未収金)600

になります。

対照勘定仕訳❶の反対仕訳を行い、備忘記録取り消します。備忘録はあくまでも仮の勘定科目を使っています。

そのため、「仕入」勘定や「売掛金」勘定などには全く影響しません。初めから計上していないからです。

スポンサーリンク

なぜ売上原価ベースで繰越試用品を計上するのか

備忘記録では「売価」を用いていました。しかし、決算時の仕訳で、残っている試用品は、売上原価ベースで計上します。何故でしょうか。

筆者の解釈で、端的に結論から言えば、「会社の資産を正しく評価するため」です。

元々その商品自体の価値は原価です。原価に利益を加えたのが売価です。つまり、その商品自体の価値はあくまでも原価だというわけです。

原価ベースを用いて資産を記録しないと、利益分資産が多くなります。これは不正につながります。資産には利益は考慮せず、ありのままの状態・評価を示さなければいけません。

スポンサーリンク

まとめ

対照勘定法について理解できましたでしょうか。

対照勘定法とは、借方と貸方で対となる勘定科目を用いて仕訳を行うことにより、商品売買における売価を備忘記録する方法のことです。

備忘記録というのがポイントでした。忘れないようにするための仮の帳簿です。

もし対照勘定法が分からなくなったらこの記事で紹介した試用販売の会計処理を思い出してください。

 

 

 

 

 

コメント