棚卸減耗費と商品評価損益の仕訳をわかりやすく解説

スポンサーリンク

簿記の勉強をされている方は、決算時の仕訳のテーマの1つとして、棚卸減耗費商品評価損益の会計処理があります。

企業が持つ商品の在庫は、通常、取得原価で帳簿に記録されていますが、決算時にそのまま取得原価で処理して良いのでしょうか。

決算時には、投資家の企業評価に役立つような正確な情報を提示しなければなりません。そのため、帳簿上の在庫数量と実際に数えた在庫の違いであったり、その商品の流行や劣化を反映する必要があります。

この記事では、簿記の初心者向けに、棚卸資産(商品の在庫)の調整のための仕訳である、棚卸減耗費と商品評価損益の仕訳についてわかりやすく解説していきます。

スポンサーリンク

棚卸と棚卸資産とは?

棚卸とは、「決算時などの一定時点での商品等の在庫の数量を実際に数えて確認すること」です。在庫をチェックする作業だと思っておけばいいと思います。

また、棚卸資産とは、在庫のことです。商品や原材料、製品といった、企業が在庫管理している物のことです。

決算時には、この「棚卸」により、現時点での商品等の在庫状況を確認する必要があります。

スポンサーリンク

棚卸減耗とは

棚卸減耗とは、棚卸により減った分のことです。棚卸のところを言い換えると、商品等の在庫の数量確認により減った分のことです。

つまり、紛失などの原因により、実際に在庫確認した数量(実地数量)が帳簿上の数量(帳簿数量)に比べて減少している分のことです。

棚卸減耗によって生じた損失のことを、棚卸減耗費といいます。

スポンサーリンク

棚卸減耗費の計算方法

先ほども説明したように、棚卸減耗費は、実際に在庫確認した数量(実地数量)と帳簿上の数量(帳簿数量)の差によって生じる損失のことです。

棚卸減耗費を求める計算式は、

棚卸減耗費 = 原価 ×(帳簿数量 – 実地数量)

      = 帳簿棚卸高 – 実地棚卸高

このようになります。決算時点で、棚卸減耗費を算出することになりますので、

棚卸減耗費 = 期末帳簿棚卸高 – 期末実地棚卸高

と表せます。

棚卸減耗費は、「帳簿と実地での数量の違いのみ」に着目したものです。棚卸とは在庫の数量確認のことでした。棚卸減耗費とは、「在庫の数量確認によって減った分の損失」の意味です。「数量の違い」がポイントです。

計算式だけでは、とても理解しにくいですよね。棚卸減耗費は、下の図のグレーの部分の面積を求めているだけです。

次に、商品評価損益について説明します。

スポンサーリンク

商品評価損益とは

商品評価損益とは、「在庫の商品の仕入れ時の価値と現在の価値との差によって生じる損益」のことです。棚卸減耗費は、数量の違いでしたが、商品評価損益は、「価値の違い」です。

棚卸資産は、通常、取得原価で帳簿に計上されています。仕入れの値段ですね。しかし、価値は変動しますよね。仕入れた時から1年経ったら、その商品の価値は変わってしまうんです。

その仕入時の価値を現在の価値に修正するために、正味売却価額を使います。

正味売却価額とは、

正味売却価額 = 売値 – 見積販売直接経費

で算出されます。

正味売却価額は現在の価値だと思っておけばいいと思います。

売値とは、売却市場の時価のことです。

見積販売直接経費とは、売るときにかかるコストのことと考えてください。人件費だったり、運賃だったりかなと個人的に捉えています。

期末での正味売却価額(決算時の商品価値)が、取得原価(仕入時の商品価値)よりも低ければ、より実態に合わせた決算報告書を作成するために、帳簿価額を正味売却価額に切り下げます。

この正味売却価額を用いて、商品評価損益を計算します。

ちなみに、商品には2種類あります。良品劣化品です。在庫として長期間保管していた商品ですから、中には性能の落ちた物や破損した物もありますよね。良品と劣化品とで区分する必要があります。

したがって、良品分の正味売却価額と、劣化品分の正味売却価額の2種類の正味売却価額を計算することになります。

スポンサーリンク

商品評価損益の計算方法

商品評価損益は、上で説明したように、良品分の正味売却価額劣化品分の正味売却価額の2種類の正味売却価額を用いて計算します。

商品評価損益を求める計算式は、

商品評価損益 = ( 原価 – 良品分の正味売却価額 )× 良品数量 + ( 原価 – 劣化品分の正味売却価額 ) × 劣化品数量

となります。この式を少し変形すれば、

商品評価損益 = 原価 × 実地数量 - ( 良品分の正味売却価額×良品数量 + 劣化品分の正味売却価額 × 劣化品数量 )

となります。端的に言えば、

商品評価損益 = 期末実地棚卸高 – ( 良品の価値 + 劣化品の価値 )

になります。計算式だけは、とても理解しにくいですよね。

下の図の茶色の部分の面積を求めているだけです。

 

スポンサーリンク

棚卸減耗費と商品評価損益の仕訳

ここからは、具体例から、実際に仕訳のやり方を説明します。

(具体例)ある会社の決算整理前残高試算表と棚卸資産の状況は下の資料の通りだった。決算時の仕訳を示しなさい。

条件1▶︎ 期末帳簿棚卸高:60,000円 (数量:200個 原価:300円)

条件2▶︎ 期末実地棚卸数量:180個 

条件3▶︎ 期末実地棚卸数量180個の内訳 (良品:150個 劣化品:30個)

条件4▶︎ 良品の正味売却価額:270円 劣化品の正味売却価額:120円

 

まず、繰越商品(期首商品)を、既に売れたとして、仕入に振り替えます。決算整理前残高試算表の「繰越商品」を仕入にする処理をします。

①  ( 仕入 )40,000 ( 繰越商品 )40,000

次に、期末の残った商品(期末帳簿棚卸高)を、仕入から繰越商品に振り替えます。まずは、帳簿上の数値で振替えます。

② ( 繰越商品 )60,000 ( 仕入 ) 60,000

これは、下の図の赤い太枠部分の面積になります。原価(300円)×帳簿数量(200個)で60,000円と求めることができます。この処理の後に、実地数量や正味売却価額を反映して、期末商品の価値を実態に近づけていきます。

そして、棚卸減耗費を費用として計上し、その分、繰越商品の価値を減らします。

( 棚卸減耗費 )6,000 ( 繰越商品 )6,000

計算方法は、棚卸減耗費 = 原価 ×(帳簿数量 – 実地数量)でしたよね。よって、300円×(200個−180個)=6,000円となります。これは、下の図のグレーの部分の面積です。

最後に、商品評価損益を計算します。これは、期末実地棚卸高から、原価と正味売却価額の差を考慮して算出します。下の図の茶色の太枠の部分が商品評価損益となります。この面積を求めればいいのです。

  • 期末実地棚卸高:300円×180個=54,000円
  • 良品分の価値:270円×150個=40,500円
  • 劣化品分の価値:120円×30個=3,600円

ここで、商品評価損は、商品評価損益 = 原価 × 実地数量 - (良品分の正味売却価額×良品数量 + 劣化品分の正味売却価額 × 劣化品数量)でした。

これに当てはめて計算すると、商品評価損益は54,000-(40,500+3,600)=9,900円となります。よって、商品評価損益の仕訳はこのようになります。

(商品評価損益) 9,900 (繰越商品) 9,900

これは、下の図の茶色の太枠の部分の面積となっています。

以上で、決算時の棚卸資産の仕訳は終わりです。まとめると、下のようになります。

①  ( 仕入 )40,000 ( 繰越商品 )40,000

② ( 繰越商品 )60,000 ( 仕入 ) 60,000
③ ( 棚卸減耗費 )6,000 ( 繰越商品 )6,000
④ ( 商品評価損益 ) 9,900 ( 繰越商品 ) 9,900

 

スポンサーリンク

まとめ

棚卸減耗費商品評価損益の仕訳は理解いただけたでしょうか。文字ではイメージしにくいので、この記事で紹介している図でイメージしてもらえると、より理解は深まると思います。

自身でも図を書きながら問題を解いてみてください。

棚卸減耗費と商品評価損がごちゃごちゃになってしまうことがあるので、文字の意味で覚えましょう。

棚卸減耗費の「棚卸」は在庫の数量を確認することです。つまり、「数量」の違いを表しているのが「棚卸減耗費」になります。

一方で、商品評価損は、その商品の取得時の価値と現在の価値の差を表しています。「価値」の違いです。ここを押さえておけば、混乱は少なくなると思います。

コメント